短歌(返歌)5首。猟奇歌を嬢舌短歌リズム風に①

【猟奇歌】

抱きしめるその瞬間にいつも思ふ

あの泥沼の底の白骨


【返歌】

君を抱く最中の眩暈

秘め事のあなたは今日も沼底の骨



【猟奇歌】

白い蝶が線路を遠く横切つて

汽車がゴーと過ぎて血まみれの恋が残る


【返歌】

白き蝶また一頭と増えていく

踏切の血に恋をしている



【猟奇歌】

すれちがつた今の女が眼の前で

血まみれになる白昼の幻想


【返歌】

ジャケットの内ポケットに

切れるもの

男は甘い夢 白昼夢



【猟奇歌】

おしろいの夜の香よりも真黒なる

夜の血の香を恋し初めしか


【返歌】

香水をばら撒くよりも欲しいのは

貴方の香り恋し血の味



【猟奇歌】

ある女の写真の眼玉にペン先の

赤いインキを注射して見る


【返歌】

恋人と映る真横にペン先を

赤いインクで夕焼に塗る



夢野久作『猟奇歌』より

*猟奇的なモチーフの短歌

mikamiryo

短歌作家・三上りょうのしごと部屋