短歌(返歌)5首。猟奇歌を嬢舌短歌リズム風に①
【猟奇歌】
抱きしめるその瞬間にいつも思ふ
あの泥沼の底の白骨
【返歌】
君を抱く最中の眩暈
秘め事のあなたは今日も沼底の骨
*
【猟奇歌】
白い蝶が線路を遠く横切つて
汽車がゴーと過ぎて血まみれの恋が残る
【返歌】
白き蝶また一頭と増えていく
踏切の血に恋をしている
*
【猟奇歌】
すれちがつた今の女が眼の前で
血まみれになる白昼の幻想
【返歌】
ジャケットの内ポケットに
切れるもの
男は甘い夢 白昼夢
*
【猟奇歌】
おしろいの夜の香よりも真黒なる
夜の血の香を恋し初めしか
【返歌】
香水をばら撒くよりも欲しいのは
貴方の香り恋し血の味
*
【猟奇歌】
ある女の写真の眼玉にペン先の
赤いインキを注射して見る
【返歌】
恋人と映る真横にペン先を
赤いインクで夕焼に塗る
夢野久作『猟奇歌』より
*猟奇的なモチーフの短歌
0コメント