短歌(返歌)5首。猟奇歌を嬢舌短歌リズム風に③
【猟奇歌】
真夜中に
心臓が一寸休止する
その時にこはい夢を見るのだ
【返歌】
夜深く
無数の針の降る夢の
その一本が胸まで届く
*
【猟奇歌】
殺したくも殺されぬ此の思ひ出よ
闇から闇に行く
猫の声
【返歌】
燃やしても灰を産まない日記帳
闇をみつけたように鳴き声
*
【猟奇歌】
すれ違つた白い女が
ふり返つて笑ふ口から
血しほしたゝる
【返歌】
君だけにみえる女のいる秘密
血の滴りを笑うのは誰
*
【猟奇歌】
美しく毛虫がもだえて
這ひまはる硝子の瓶の
夏の夕ぐれ
【返歌】
蝶になる約束のひと
美しく悶える夏を瓶に詰めたい
*
【猟奇歌】
紅い日に煤煙を吐かせ
青い月に血をしたゝらせて
画家が笑つた
【返歌】
指先の血の滴りを
カンヴァスに
紅い日に煤 青い月に恋
夢野久作『猟奇歌』より
*猟奇的なモチーフの短歌
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