【新聞掲載】2018/12/9付 西日本新聞・朝刊『随筆喫茶』にエッセイ掲載。

随筆喫茶

福岡の若者に広がる短歌  三上りょう


私が福岡を拠点に短歌作家として創作活動をはじめて今年の十二月でちょうど十年になる。

 自主制作の本やポストカード、栞などの紙雑貨を発表し、作品展や朗読ライブをおこなうことで短歌と繋がってきた。

今は次のライブに向けて、冬に合う短歌と曲を選び出し練習を重ねている。

 作歌生活を続けるなかで、五、六年前からだろうか、短歌を詠む若者がぐんと増えてきたように思う。

 SNSを利用して、たった今詠んだ歌を感覚的に発信し、すぐに感想を出し合える気軽さが短歌を始めやすくしているのかもしれない。

 そこでみつけた仲間と集まり、歌会をすることもできる。歌会とは自作の短歌を持ち寄り評を言い合う会のことだ。

 ここ福岡では「福岡歌会(仮)」という歌会が熱い。

 短歌結社への所属、無所属を問わずに歌を詠んでいる人なら誰でも参加でき、いわゆる先生となる人はいない。評をする際も匿名なので気兼ねなく意見が言える。

 さらに忘れてはいけない二次会。通称「ごまさばの時間」と呼ばれるもので、これも人気の秘訣だろう。必ず福岡名物の胡麻鯖を頼み、それを肴にお酒を傾ける。そうやって、広く短歌を語り合うことで、作歌へのモチベーションがあがる。

 そうして生まれた短歌を冊子にまとめ、アンソロジーという形で同人誌即売会に出展するというサークルや団体の動きも活発になってきている。

 現在、福岡で一番大きな文芸同人誌即売会は「文学フリマ福岡」だ。これは、小説のブースが主だが、回を重ねるごとに詩歌の出展も増えているようだ。

 開場前に行列が出来るほどの人気で一般参加者は目当ての作家のブースに向かったり、新しい作品との出合いを求めて会場を見て回ったりする。

 他にも福岡で生まれた詩歌を主とした展示即売会「福岡ポエイチ」や、学生の発表の場を作ることに積極的な「ちょこっと文芸福岡」という文芸イベントがある。

 即売会は作品の発表の場というだけではなく、読者と直接触れ合うことができる場でもある。

二度目の「福岡ポエイチ」出展の際に、「りょうさんの本がきっかけで短歌をはじめました」という人がブースに来てくれた時には、活動を続けてきてよかったと、嬉しさでいっぱいになった。

 また同人活動だけではなく、福岡市を拠点としている出版社「書肆侃侃房」では、若者たちに短歌が新たな広がりをみせていることから「新鋭短歌シリーズ」を始めた。今年第四期を迎えた企画で、第一歌集を出したい歌人が有名な歌人の監修のもと出版できるため、はじめて歌集を出す者には心強いシステムだ。「いつか自分も」と夢見る若い歌人も多いだろう。

 若い歌人の動きから目が離せない福岡で、私も新しい歌集や歌人との出合いに刺激をもらい、日々挑戦していく気持ちを忘れずにいたい。